地域の中心に生まれ変わった
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ヨーロッパの町の成長期はかなり以前に終わっている。 そして昨今は経済不況の影響をうけてどこの地方自治体も財政はきびしく、 町の必要な手入れへの予算がまわらず、 まして町づくりの実験などはできないのが実状である。
町は、 建物と同じく手入れをしなくて放っておけばどんどん悪くなる。 反面、 住民がじっさいに体験出来るような、 町をよくする改良案が町のどこかに1つ2つ実現されれば、 住民にも政治家にも町の手入れが必要なこと都市を考えていくことがいかに大切であるかが理解されるであろう。
ほんの1つか2つの改良事業で町はすっかり変わる。 そんな例をここで紹介したい。
図1 ロスドルフの位置 |
ここで取り上げるロスドルフのウイルヘルム・ロイシュナー通りは、 村落中心部の生活道路であり、 同時に隣の村落オーバー・ラムシュタットを結ぶ州道(L3104号線)である。
図2 ロスドルフの市街地全体と幹線道路 |
この道路計画では、 ウイルヘルム・ロイシュナー通りの道路を拡張することと、 もう1つ内側に道路を新設して村の中心部に環状路線をつくることが考えられていて(村はまさに車に占領されるところであった)、 この計画のため役所はその関連土地を買い占めていた。 実はこの土地が後になって大変有効に働くことになる。
その後、 ロスドルフはヘッセン州の、 9年間の建設助成金のついた、 農村整備計画プログラムの適用を受けることになった。 「都市計画グループダルムシュタット」(Plaungsgruppe Darmstadt)がこの計画依頼を受けたのは1985年である。
このような、 たとえば農村整備計画とか地区再開発のような大規模な計画とか、 役所内では処理できない高度な知識が必要なプロジェクトは民間の都市計画事務所に委託することが多い。 また小規模でも団地計画のように独立した計画は、 役人の数をふやさないために外に出されることがある。
農村整備計画の趣旨の1つは「歴史的な地域特有の景観と環境の保全と維持」である。 ロスドルフのように、 中世からのせまい道路に高密度に家がたち並んでいる町では、 交通増加に対処しようとする場合、 町並み景観への問題が起きてくる。 交通問題を最上位において解決しようとすれば、 この例でみられるように地域特有の景観の破壊につながり、 将来取り返しのつかない景観上大きな損害となり、 地域景観の保全と維持という農村整備計画の目標に相反することになる。
都市計画で交通問題と取り組む場合、 その目標は、 地域の環境や景観を考えながら車の通行はもちろん歩行者や自転車にも安全であるような交通計画を作ることである。
とはいうもののいくら良い案でも、 すでに計画決定し建物とりこわしが半ばまで進行している計画をここにきてホゴにするのは生易しいことではない。 しかしその1985年という時期がよかった。 この時期になって世間一般の風潮が、 クルマ至上の経済一辺倒で住環境を無視した道路拡張に批判的になったこと、 それに加えて国の新しい道路法(EAE 85/95)で市内では「道路は歩行者が逍遥する場所でもあること」といった項目が付け加えられ、 道路幅が最も狭いところで、 トラックがやっと2台すれ違うことが出来る、 4.5mが可能になった。
都市計画グループダルムシュタットはこの福音書をもって、 時間をかけて2つの機関を説得する:1つは役所の議会であり、 もう1つは州の道路局である。
ウイルヘルム・ロイシュナー通りの見直し計画の骨子は
図3 ウイルヘルム・ロイシュナー通り |
図4(a) |
図4(b) |
図4(c) ウイルヘルム・ロイシュナー通りの計画 |
図4(d) シュタイナーハウス |
図5 道路拡張のため部分的に取り払われた計画当初の町並み風景(上)とアンガー様式を取り入れた計画図 |
図6 アンガーのある広場:計画図 |
図7 アンガーのある広場 |
こうしてウイルヘルム・ロイシュナー通りがアンガー形式で新しい地域の中心として生まれ、 ここがこれから村の核として発展していくであろう。 現在ではカフェーが一軒と本屋さんがあるが、 これから例えば若い理髪師が新しく開店する場所を探すなら、 ここが最も適しているであろう。 ここは買い物にきた人や理髪にきた人が戸外でコーヒーを楽しんだり、 子供が噴水で遊び、 しばし立ち話が出来る空間である。
アンガー広場は道路でありながらクルマから開放された囲まれた市民の憩いの空間である。 わが国の多くの町の状態と同じような状況から出発したこのプロジェクトは、 1つの都市改造の手法として興味ある例題であろう。
これは今年度ヘッセン州の建築都市計画公開デーの展示プロジェクトである。
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アンガー(Anger)とは、 とくに北ドイツの村落に見られる広場の形式で、 道路の一部が広がった形の町並み形式である。 本来は農村の小放牧場で、 羊を朝ここに放牧し夕方ひきあげるための広場。 中央に教会があることもある。 このアンガー形式の道路がこの近郊村落にも存在し、 ロスドルフではボイネ・ガッセなどに見られる。