先ごろ、テレビを見ていたら、「時雄、時雄」とドイツのポップ歌手がギターをかかえてさけんでいる。何のことかと思ったら「東京」のことなのです。
そうです、ドイツ語では「Tokyo」ではなく、「Tokio」という綴りが正式になっています。新聞雑誌もそうですが、ドイツの言葉を集めている辞書、Duden正式書法版、にもそのように書かれています。
これは我が国の首都にたいして、はなはだ失礼ではないか、ちゃんと正しく書き、かつ、歌ってもらいたい、と、われわれ日本人としては思う次第であります。(ここで文章の格調が一段と高くなりました)
しかし考えてみれば、我々だって同じような罪を犯しています。
いい例が「ゲーテ」。ドイツの世界的文豪Goethe、国民のヒーローを日本では勝手にいいかえて、「ゲーテとは俺のことかとGoethe言い」などという川柳が出来たりしています。
そしてドイツの国民的飲料水「Bier」を「ビール」。ドイツ語に近い発音なら「ビヤ」でしょうが、日本語の辞書「広辞苑」にも「ビール」で載っており、これを勝手に書き換えたりすれば、大学入試では桜が散ること確実でしょう。
このビールがどれほどドイツの国民の生活の中に浸透しているか、というお話を1つ:これは学友から聞いた話です。
ドイツの若者には兵役義務がある、まあ民間服務という方法もあるのですが、彼はドイツ軍隊に入隊した。同じ隊に頭の少し弱いのがいる。何事もはっきりせず動作もにぶい。ある日、その男と学友がいっしょに街に出ることになった。その彼は映画の入場料、飲食代、靴の値段、すべてを「ビール何杯分」で考える、「ビール8杯分、それは高い」、というように、その換算を実に早くてスムースにやる。彼にしては、ビールが日常生活のすべての価値基準なのでした。
ドイツではビールの値段はお店で勝手には上げられなく、一時期ミネラルウオーターやコーラがビールより高い時期があったのは、こういった社会情勢があるからです。これは青少年によくないというので、お店に少なくとも一種類はビールより安いノンアルコール飲料を置いて置くことがいまでは義務つけられています。
ドイツはやはりビールの国です。